「高齢になってから、急に肩や膝が痛むようになった」「朝起きたときに手がこわばり、動かしにくい」といったお悩みはありませんか。
高齢者の関節痛は、加齢による変形性関節症と思われがちですが、60歳以降に発症する「高齢発症関節リウマチ(EORA)」が隠れていることもあります。
もし関節リウマチだった場合、放置すると関節の破壊が進み、着替えや歩行などの日常生活に影響する可能性があるため、早期発見・早期治療が大切です。
本記事では、高齢発症関節リウマチの特徴や症状、一般的な関節リウマチとの違い、検査・治療方法について解説します。
目次
高齢者にみられる関節リウマチ「高齢発症関節リウマチ(EORA)」とは

高齢発症関節リウマチ(Elderly-Onset Rheumatoid Arthritis)とは、60歳以降に発症する関節リウマチのことです。英語の頭文字を取り「EORA:イオラ」と呼ばれています。
関節リウマチは、免疫の働きに異常が起こり、関節を包む滑膜に炎症が生じる自己免疫疾患です。EORAも基本的な病気の仕組みは同じであり、関節リウマチの一種と言えます。
一方、高齢者の場合は肩や膝などの大きな関節から症状が現れたり、短期間で強い症状が出たりすることがあります。加齢による関節痛と区別しにくいため、注意が必要です。
高齢発症関節リウマチに現れる5つの特徴

高齢発症関節リウマチには、一般的な関節リウマチとは異なる特徴的な傾向があります。
ここでは、高齢者の関節リウマチにみられる主な特徴を詳しく解説します。年齢や症状だけで自己判断せず、気になる症状がある場合は早めにリウマチ科や整形外科を受診しましょう。
| 比較項目 | 高齢発症関節リウマチ(EORA) | 若年・中年期の関節リウマチ |
| 発症年齢 | 60歳以降 | 主に30~50歳代 |
| 症状の現れ方 | 急に現れやすい | 徐々に現れやすい |
| 症状が出やすい関節 | 肩・膝などの大きい関節 | 手指・手首など |
| 全身症状 | 発熱・倦怠感など | 比較的目立ちにくい |
| 男女差 | 男女差が少ない※ | 女性に多い |
※依然として女性に多いですが、若年・中年期の関節リウマチと比較すると男女差が縮まります。また、上記は全体的な傾向であり、症状の現れ方には個人差があります。
1. 60歳以降に初めて発症する
高齢発症関節リウマチ(EORA)は、一般的に60歳以降に初めて発症する関節リウマチを指します。
一般的な関節リウマチは30~50歳代の女性に多いとされていますが、発症する年齢は幅広く、高齢になってから初めて発症する方も少なくありません。
なお、若い頃に関節リウマチを発症して高齢になっても治療を続けている方は、高齢発症関節リウマチには含まれません。
2. 急に症状が現れることがある

若年から中年で発症する関節リウマチは、関節の痛みやこわばりが比較的ゆっくり現れることがあります。
一方、高齢発症関節リウマチでは、数日から数週間のうちに関節の痛みや腫れが現れることがあります。「ある日突然、肩が上がらなくなった」「急に手首や膝が腫れた」という形で気づく方もいます。
ただし、症状の現れ方には個人差があり、すべての方が急激に発症するわけではありません。
3. 肩や膝などの大きな関節に症状が出やすい
関節リウマチでは、手指や手首などの小さな関節に症状が現れるイメージがあるかもしれません。
しかし、高齢発症関節リウマチでは、若年・中年の関節リウマチと比較して、手足の小さな関節に症状が現れる割合は低いものの、肩・肘・膝などの大きな関節に炎症が起こりやすい傾向があります。
左右の肩が痛む、腕を上げにくい、膝が腫れて歩きにくいといった症状がみられます。
4. 発熱や倦怠感を伴うことがある

関節の痛みや腫れだけでなく、微熱、食欲低下、体重減少、強い倦怠感などの全身症状が現れることもあります。
これは、関節で炎症が起こった際に「炎症性サイトカイン」と呼ばれる、免疫や炎症に関わる物質が体内で増えることなどが関係しています。
炎症の影響が全身に及ぶことで、全身症状につながります。
血液検査では、炎症の程度を示すCRPや赤血球沈降速度(赤沈)が高くなるケースがあります。ただし、感染症やほかの病気でも同様の変化がみられるため、数値だけで関節リウマチとは判断できません。
5. 若年・中年期の関節リウマチより男性の割合が高い
若年・中年期に発症する関節リウマチは女性に多い病気ですが、高齢発症関節リウマチでは男女差が小さくなり、通常の関節リウマチと比べて男性の割合が高くなる傾向があります。
加齢に伴って免疫やホルモンの状態が変化することが一因として考えられていますが、詳しい仕組みはまだ十分に解明されていません。
そのため、高齢の男性に関節の腫れや朝のこわばりがある場合も、「男性だからリウマチではない」とは判断できません。
高齢者の関節痛には、関節リウマチ以外にもさまざまな原因があります。症状だけで区別することが難しい病気もあるため、医療機関で診察を受けることが大切です。
高齢発症関節リウマチと間違えやすい病気
変形性関節症

変形性関節症は、加齢や長年の負担によって関節の軟骨がすり減る病気です。膝や股関節、指の第一関節などに多くみられます。
一般的には、動き始めや関節を使ったときに痛みやすく、朝のこわばりは比較的短時間です。
リウマチ性多発筋痛症
リウマチ性多発筋痛症は、主に50歳以上の方に発症し、肩や首、腰、太ももなどに痛みやこわばりが現れる病気です。
大きい関節に症状が出やすい高齢発症関節リウマチと似ていますが、関節そのものの腫れが目立たない場合があります。どちらとも取れるような症状を持つケースもあるため、専門的な診察と検査が必要です。
偽痛風
偽痛風は、関節内にピロリン酸カルシウムの結晶がたまり、急激な炎症を起こす病気です。高齢者の膝や手首などに多く、発熱を伴うこともあります。
通常は一つまたは少数の関節に突然強い痛みが現れますが、複数の関節に症状が出ると関節リウマチとの区別が難しい場合があります。
高齢者の関節痛で早めに受診したい症状
次のような症状がある場合は、加齢による痛みと決めつけず、リウマチ科や整形外科へ相談しましょう。
- 朝の手指や身体のこわばりが繰り返し現れる
- 複数の関節が腫れている
- 左右同じような場所に痛みや腫れがある
- 肩や膝の強い痛みが急に現れた
- 関節痛とともに微熱や倦怠感が続いている
- 痛みで着替えや歩行が難しくなってきた
関節リウマチによる関節の変化は、発症早期から進むことがあります。早い段階で診断し、適切な治療を始めることが、将来の関節機能を守ることにつながります。
当院で行う高齢発症関節リウマチの検査・診断方法
高齢発症関節リウマチは、一つの検査だけで診断できる病気ではありません。
さいとう整形外科リウマチ科日進分院では、問診や触診、血液検査、画像検査などを組み合わせて総合的に判断します。
問診・触診

患者さんのこれまでの症状を確認します。痛みを感じている関節に加えて、手指や足趾を含めた全身の関節を実際に触り、腫れや動かしにくさなどを調べます。
関節以外の病気が疑われる場合は、筋肉や腱の状態も確認します。
血液検査

血液検査では、関節リウマチに関連するリウマトイド因子(RF)や抗CCP抗体、CRP、赤血球沈降速度などを確認します。
RFや抗CCP抗体は診断の手がかりになりますが、陰性でも関節リウマチを否定できるわけではありません。反対に、陽性でも必ず関節リウマチとは限らないため、診察やほかの検査結果と組み合わせて総合的に判断します。
また、治療薬を安全に使用できるか判断するため、肝機能・腎機能・血球数なども確認します。
画像検査

レントゲン検査では、関節の隙間が狭くなっていないか、骨びらんと呼ばれる骨の欠損がないかなどを確認します。ただし、発症初期は骨の変化が少なく、レントゲンだけでは関節の炎症を捉えにくいことがあります。
当院では、触診や検査結果から炎症が疑われる関節に対して、必要に応じて関節エコー検査を行います。
関節エコーでは、滑膜の腫れや血流の増加を確認でき、現在も炎症が活動している「活動性滑膜炎」の発見に役立ちます。
高齢発症関節リウマチの治療方法
薬物療法

高齢発症関節リウマチでも、治療の基本は関節の炎症をできるだけ早く抑え、関節破壊と身体機能の低下を防ぐことです。
薬物療法では、関節の炎症を抑えて関節破壊の進行を防ぐことを目指します。
治療の中心となる抗リウマチ薬に加え、症状や炎症の程度に応じて、生物学的製剤やJAK阻害薬、痛みを和らげる薬などを使用します。
服薬する上での主な注意点
- 腎機能・肝機能の低下
- 治療による感染症のリスク
- 悪性腫瘍
- 帯状疱疹
- 血栓症のリスク
※薬剤によって注意すべき副作用やリスクは異なります。
高齢者は持病がある方や複数の薬を服用している方も多いため、一人ひとりの状態に合わせて薬の種類や量を調整します。
メトトレキサート
治療の中心となるのが、病気の進行を抑える抗リウマチ薬です。代表的な薬にメトトレキサート(MTX)があります。
腎機能が低下していると、メトトレキサートの副作用リスクに配慮する必要があります。
骨髄抑制による血球減少や感染症、口内炎、肝機能障害、間質性肺炎などの副作用が起こりやすくなるため、投与の可否や用量を慎重に検討します。
現在服用している薬との組み合わせも確認し、患者さん一人ひとりに合った種類と量を慎重に検討します。
生物学的製剤・JAK阻害薬
従来の抗リウマチ薬だけで炎症を十分に抑えられない場合は、生物学的製剤やJAK阻害薬を検討することがあります。
高い治療効果が期待できる一方、感染症などへの注意が必要です。年齢だけで使用の可否を決めるのではなく、病気の活動性や持病、身体機能、生活環境などを総合的に判断します。
治療薬の選択は患者さんごとに異なるため、診察や検査結果を踏まえて医師が判断します。
痛みや炎症を和らげる薬
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やステロイド薬を使用することもあります。
ただし、これらは抗リウマチ薬とは役割が異なり、病気の進行そのものを十分に抑える薬ではありません。
リハビリテーション

関節リウマチによる痛みや腫れで身体を動かす機会が減ると、関節の可動域が狭くなったり、筋力や歩行機能が低下したりすることがあります。
当院では、理学療法士が関節や筋肉の状態、歩き方などを評価し、患者さん一人ひとりの症状に合わせた関節可動域訓練や運動療法を行います。
薬物療法で炎症を抑えるとともに、リハビリテーションによって「腕を上げる」「立ち上がる」「歩く」といった日常動作の維持・改善を目指します。
60歳以上の関節痛・腫れは早めにご相談ください
高齢発症関節リウマチは、一般的な関節リウマチと比べて、急に発症しやすい、肩や膝などの大きな関節にも症状が出やすい、若年・中年の関節リウマチと比較して男女の比率差が少ないといった特徴があります。
一方で、変形性関節症やリウマチ性多発筋痛症、偽痛風など、高齢者に多いほかの病気と症状が似ています。
関節リウマチが疑われる場合は、リウマチ科を受診しましょう。関節リウマチか加齢による関節の変化か分からない場合は、整形外科でも相談できます。
特に、関節が赤く腫れて高熱を伴う、関節を動かせないほど急激に痛む場合は、感染症などの可能性もあるため、早めに医療機関へ連絡しましょう。
当院では関節リウマチの早期診断を目指した診療を行っています
さいとう整形外科リウマチ科日進分院では、問診・触診・血液検査・関節エコーなどを組み合わせ、関節の痛みや腫れの原因を確認します。
日進市・赤池周辺で「年齢のせいだと思っていた関節痛が続いている」「高齢者のリウマチではないか心配」という方は、当院へご相談ください。
